FC2ブログ

プロフィール

南葵音楽文庫を学び楽しむ集い

Author:南葵音楽文庫を学び楽しむ集い

南葵音楽文庫:
紀州徳川邸にあったわが国初の音楽専用ホール、そこに併設された南葵音楽文庫(現在和歌山県が保管)についての情報を順次掲載しています。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

ブログ内検索

最新トラックバック

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QRコード

選曲と曲目に隠された秘密と謎 <2>

麻布飯倉 南葵楽堂に所蔵されていた南葵音楽文庫、なかでもカミングズ・コレクションに焦点をあてた日本初、いやたぶん世界初のコンサート開催にあたり、実行委員会の若手2名(ともに慶大大学院博士課程で音楽学を専攻)は、長時間かけてこの稀代のコレクションにふさわしい選曲に没頭しました。そればかりか大半の曲は、オリジナル資料から楽譜をあらたに作成しました。このコンサートは、演奏曲目や使用する版が日本初も多数含まれています。そこで、このような選曲になったワケ、各曲にひそんでいる謎や秘密を、ご紹介しましょう。

今回は、2月1日のコンサートの幕開けを飾るベックウィスについてご紹介します。ベックウィスは、今日ではほどんど知られていない作曲家ですが、どのような人物だったのでしょうか。



ジョン・‘クリスマス’・ベックウィス(1750‐1809(生年については異説あり))は、イングランド東部の町ノリッチに生まれ、オックスフォードのモードリン・カレッジで音楽を学びました。のちに故郷のセント・ピーター・マンクロフト教会やノリッチ大聖堂で聖歌隊長やオルガニストを歴任しています。「‘クリスマス’・ベックウィス」と呼ばれるのは、12月25日が彼の誕生日だったことに由来します。ただし、ベックウィス自身がこのニックネームを用いたことはなく、本コンサートで採り上げる《ヴォランタリー 第2番》の楽譜(南葵音楽文庫所蔵《オルガンまたはハープシコードなどのための6つのヴォランタリー》)でも、署名は単に「ジョン・ベックウィス」と記されています。

ヴォランタリーとは、教会の礼拝に際して演奏されるオルガンのための即興的な音楽のこと。教会オルガニストを務めていたベックウィスは即興演奏家として高名で、ヴォランタリーを得意としていました。雑誌『ジェントルマンズ・マガジン』に掲載された彼の死亡記事(1809年)でも、「その無類のヴォランタリーを創出する天分とその演奏スタイル」が讃えられています。

さて、今回演奏されるヴォランタリーは、ベックウィスがオックスフォードで音楽を学んでいた1780年に書かれ、ロングマン&ブロドリップ社から出版されました。ベックウィスは、幼い頃から音楽の才能を開花させたと伝えられていますが、この曲が作られた時期、彼の名は、まだそれほど広くは知られていなかったようです。楽譜に付されている予約購入者のリストを見ると、予約者のほとんどは、生まれ故郷ノリッチや彼が在学していたオックスフォードの人々でした(ちなみに彼の師匠であるフィリップ・ヘイズはこの楽譜を4冊も予約しています。なんとも微笑ましいですね)。

《ヴォランタリー 第2番》は2楽章構成で、ニ短調の短い前奏曲に同主長調の華麗なアレグロ楽章が続きます。曲は平明で未熟な部分もあるものの、今日ではベックウィスの代表作のひとつに数えられています。

ベックウィスはヘンデルのオラトリオを抜粋上演した際に、演奏に先立って自作のヴォランタリーを弾いてみせことがあったそうです。ヴォランタリーを聴きながら、巨匠たちが活躍したイギリス・バロックの世界に想いを馳せていただければ幸いです。

<< 『MOSTLY CLASSIC』 「慶応大学が南葵音楽文庫をデジタル化 ベートーヴェンの自筆譜など貴重な音楽資料」 | ホーム | 大学地域連携シンポジウム パネル展示 終了 >>


 BLOG TOP